宮下貴裕と林真理子が語るデニムスタイルと Wrangler に対する想い

数あるファッションアイテムの中でも、定番中の定番といっても過言ではないデニム。トレンドが目まぐるしく変化する昨今においても、
自身のワードローブの中心に据えている方も多いのではないだろうか。本稿では、そんな普遍的なアイテムとの付き合い方を改めて考えるべく、日頃からデニムを愛用する〈TAKAHIROMIYASHITATheSoloist.(タカヒロミヤシタザソロイスト.)〉のデザイナー 宮下貴裕と〈jonnlynx(ジョンリンクス)〉のデザイナー 林真理子のインタビューをお届けする。両者の考えるデニムスタイルに加えて、創業から100年以上の歴史を誇り、近年は様々なブランドとのコラボレーションを精力的を行う〈Wrangler(ラングラー)〉に対する想いを語ってもらった。

宮下貴裕

宮下さんは日頃からデニムアイテムは着用されますか?

着ますね。僕にはあまり定番的に着るというアイテムはないので、1つのアイテムに限らず、その時々で自分が手掛けてきたものを穿いたり着たりすることが多いです。

ファッションスタイルでルールはありますか?

こう着なければいけないというようなルールが嫌いなので、もちろん拘りはあるのですがルールを気にすることはないです。

Wranglerはこれまでも着用したことがありますか?

もちろんあります。Wranglerはデザイン的にとても優れていて面白くて、飛び抜けているんですよ。あまりにも格好良すぎて、良い意味で着るのも見るのも、見せるのも難しいのがWranglerなのかなと思っています。僕の好きな要素が全て詰まっているから、ジーンズやGジャンをデザインすると、なんだか似てしまいそうになるんですよね。

宮下さんがデニムアイテムのデザインをする上で自然とWranglerに近づくというのは興味深いです。

ジーンズのディテールの外側の股のダブルステッチが嫌いだとか、ブロークンデニムが嫌いだとか言う人も多いんですが、僕はそういうディテールが格好良いと思うことが多い。毎年そうではなく、時代にもよりますし、気分は変わるので他のジーンズが良い時もあるのですが、デザインというくくりで見ると、Wrangler以上のものはない。独特な雰囲気を持っているんです。創造した人が凄いなっていうレベルです。その人の性格が表れていると感じますね。
ファッション業界においての立ち位置が僕に近い気もする。メインストリームにはならないし、コミュニケーション能力に欠けているようなデザインも似ているのではないでしょうか。

今回、2019AWコレクションでWranglerとコラボレーションをしたきっかけは何でしょうか?

襟を真っ赤にして、カジュアルだけど高貴なアイテムを創りたかったんです。複数のブランドとコラボをしているのですが、Wranglerではウエスタンシャツを創らせてもらいました。僕が着たいと思う、僕が好きなものを選んで、創りたくて創ったんです。

Wranglerはこれまでの歴史の中で、様々なミュージシャンにも愛されてきました。音楽好きとしても知られる宮下さん的にそういう着こなしから何か影響を受けたことはありますか?

ジョン・レノンの着方は、常に抜群に格好良いですよね。Wranglerはああいう人たちに似合うものなんです。選ばれた人が似合うんですよ。自分のことを格好良いと思っている人たちが着てきたんです。Wranglerを着て格好良くなるのではなく、格好良い男が更に格好良くなる。最近公開されたタランティーノの映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』でも衣装として象徴的に使われていました。あれは明らかにタランティーノが、当時(60年代)のハリウッド映画で格好良く使われていたWranglerに対して尊敬の意味で使ったんでしょうね。格好良いということを分かって使っているんです。例えば、車で例えるとメルセデスなどとは違い、カルマンギア(フォルクスワーゲン)みたいな感じで本当に特別なデザイン。ほかに似た存在がない。だから着るのも照れくさい時があるんですよ。格好良すぎちゃうなあとか。僕は観賞用にも良いものだと思っています。「洋服のデザインはこの程度で良いや」とか「これくらいシンプルな方が格好良いでしょう」って言う人がいっぱいいると思うんですが、僕はそうは思わないので。格好良いんだったらふんだんに盛り付けた方が格好良い訳で。それがWranglerだと思っています。カルマンギアのどこがシンプルだと思います? コッテコテのデザインですよね。僕は世界一素晴らしい車だと思いますよ。

特に好きなアイテムはありますか?

やっぱりウエスタンシャツですかね。ほかにも色々なブランドのウエスタンシャツを持っていますが、どれを着ようか迷ったとき9割方Wranglerになります。その理由は明確にはわからないですが、なぜか手に取ってしまう。そんなブランドなんですよね。Wranglerという言葉の響きやリズムも良いじゃないですか。美しいメロディーが流れている。
これは私物で、いつ何処で買ったのかは覚えていないのですが、ジョン・レノンが描かれています。誰の作品なのか全くわからないんですが、この狂った感じが良いですよね。Wranglerのジーンズの、こういう湾曲している部分が多かったり、フラットじゃない癖のあるところが好きな理由の1つです。それにしてもどうしてこういうものを創ろうと思ったのか。迷走しながら創ったんだろうなと思いますし、そういうところも僕に近いなと思えるんですよね。

林真理子

林さんのファッションスタイルからは、いつもサーフィンや音楽のカルチャーを背景に感じます。ファッションスタイルを決める上で意識していることはありますか?

基本的にはオーセンティックなもの、エレガントなもの、ファッションスタイルもメンズのスタイリングが好きなんです。感覚的なところもあるので、言葉で表すのは難しいのですが、周りからはベーシックだけど芯があると言われますね。
つい最近、友達のデザイナーに言われたのが「ジョンリンクスの服には社会性がある」という言葉。自分が作る服も、着る服もやり過ぎだったり、奇をてらい過ぎることはしないです。シックでいたいと思います。

メンズファッション的なスタイルが多いかもしれませんが、女性らしさも感じます。

体型的にも、自分はあまり女性らしい体型ではないと思っていて。ワンピースとか憧れつつも、自分としては女性らしさを大切にしたいとかは一切考えていないんです。自分が好きなスタイルは常にメンズなんです。でも女の人が男の人の服を着るとセクシーに見えたりするので、そういう部分かもしれないですね。

オーセンティックなアイテムも着てサマになる人と、ただシンプルなだけで終わっている人がいますよね。要はその人の人物像やカルチャーが滲み出ていると格好良く見えるんでしょうけど。

音楽も知らないのにバンドTシャツを着ていたり、サーフィンしないけど『surf』って書いてあるようなTシャツを着ている人に違和感があるのと一緒で、コーディネートの奥にカルチャーを感じた方がスタイリングが自然になると思います。私の場合は、音楽からの影響が大きい。ミュージシャンのスタイルから学ぶことは多いです。

今日のスタイルからも音楽のルーツを感じます。

『シノワズリ』という文化様式があり、ヨーロッパから見た中国趣味の様式と言われるものなんですが、その雰囲気が好きなんです。チャイナジャケットはまさにシノワズリ的なアイテムで、古着でも集めています。その雰囲気にしたくて、ジョンリンクスのベロアチャイナジャケットをブーツカットデニムに合わせました。そこにヒョウ柄のブーツを履いて、ロックシンガーとシノワズリが混じったような感覚で合わせています。

ブーツカットやフレアのようなデニムは普段からよく穿かれますか?

ストレートなシルエットのパンツは自分の体型には似合わないと思っています。私は腰幅があまりないので、ストレートなパンツだと太ももの膨らみが強調されるのが嫌なんです。ブーツカットのようなシルエットだと、太ももの部分は細身でシルエット的に綺麗に見えるから好きですね。
基本的に、男性が着ているデニムのシルエットが理想で、ラモーンズとか。彼らは腰が細いじゃないですか。女性向けのデニムは割とお尻の丸みに沿ったシルエットが多いので、メンズっぽく穿けるデニムが理想です。

トップスのインナーに合わせているウエスタンシャツもWranglerですね。

これは昔から持っているウエスタンシャツです。古着で買って、最初は全体的にパッチが付いていたんですが、自分らしくないと思ってパッチを取ったんです。所々、パッチの名残があって今となってはその部分も好きです。今日みたいにデニムオンデニムで、ウエスタンシャツを着ることも多いですね。3年くらい前にデニムオンデニムがめちゃくちゃ流行った時は止めていましたが、最近また良いかと思っています。

林さんの中でWranglerはどういうブランドでしょうか?

他の代表的なデニムブランドはワークのカルチャーが背景にあるのに対し、Wranglerはウエスタン。それでいて、ミュージシャンに愛されてきたブランドだからなのか、着るとミュージシャンっぽく見えるのがWrangler。Wranglerが好きな人は大体音楽好きだと思っています。特に60’s、70’sの音楽好き。細身なシルエットも良い。カルチャーやデザインの面で好きなデニムブランドを考えたらWranglerになるんです。